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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

なにから何まで磁力とは、まるで歌舞伎十八番の「毛抜」みたいなことになったものである。

「……次に僕はあの時計が、どの位遅れるかを測ってみた。すると一時間につき三十五分六だけ遅れることが分ったのです。指針は殆んど半分のスピードで廻っているわけです」

「ははん、そうですかな」僕は本当に感心した、科学者なんて、豪いところへ眼をつけるものだ。

「毎時間三十五分六だけ遅れることは分れば、後は簡単です。あの時計が遅れだしてから、何時間になるか、これを勘定すればいいのです。つまり毎時それだけずつ遅れていて『深夜の市長』が見たときには二時間四十分遅れていたのだから、これを三十五分六で割ればよろしい。これは小学生でも出来る算術で、恰度四時間三十分前と出て来ます。つまりあの狂った時計が指す午後十一時四十分の四時間前ですから、それは午後七時五十分と出て来るではありませんか」

「なるほど、午後七時五十分ですかナ」

「その数字に、僕の使った測定器の誤差と、気温の変化とを考慮に入れて補正すると、一分三十秒だけ加えて、結局午後七時五十一分三十秒となる!」

「へえ――すると、その時刻にどうしたというのです」