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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
「なんですって」と速水は意外そうに僕の顔を見て叫んだ。
「なんだといって、その出て来た時刻、午後七時五十一分三十秒から、あの時計は急に遅れ始めたんです。急に遅れ始めるについては、正にあの時刻に、時計の上に何か強い磁力が働き、そしてあのとおり振子などを強く磁化してしまったのです。それだからあの時刻が大事なのです」
「なアるほど……」と、遉の僕も呻るより外、感心の仕様がなかった。算術なんて、釣銭を出すときだけに必要なものかと思ったら、これはまた見掛けによらずずいぶん恐ろしい魔術だと思った。「……それでその七時五十一分に、あの時計を急に遅らし始めた原因というのはそもそも何なのでしょう?」とついウッカリ云ったものの、僕は途端にあああれじゃないかと膝を打った。そして自分のウッカリしていたことが恥かしくて、真紅になった。――「深夜の市長」が僕を伴につれて、市内の明治昼夜銀行支店を軒なみに訪問して、尋ねていたあの言葉じゃないか。
――二十九日の午後七時五十一分頃に貴方のお店から、新しい十銭白銅貨を沢山受取っていった男がなかったでしょうかネ。――と。
すると、その金を受取った時刻が算出されたことになる。