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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

「どっちにしろ、市長の責任は遁れられぬ。T市五十年の名誉はどうなるのだ。儂の耳に早く入ったからいいようなものの、これが他の議員に知れて御覧なさい。どんな騒ぎが起ると思う……」

「ところで、動坂さん。貴方の御意見を伺いますが、もしそのT市の鍵が、落したのではなくて、誰かが盗んだのだったらどうします。その盗んだ人間を、どう処置すればいいでしょうか」

「黒河内さん。儂は警視総監じゃありませんよ。盗人の処分なんか、貴公の役目じゃありませんか」

「そうです。だから私は、自分の職務を遂行しようかと考えているのです。結局私は気の毒な検挙をしなければなりません。それでもいいでしょうか」

「妙なことを云いますなア、貴下は……」動坂は大きい顔を総監の方に向けた。「なんだか、丸で儂がその鍵泥棒を知っているようなことを云う……。なにも儂に御遠慮はいらぬ。捕えると仰有るのなら捕えたらいいでしょう。しかし……」

「しかし、何というのです」

総監と動坂との視線がかち合って、火花でも見えそうな有様だった。

「しかしだ、黒河内さん。失礼ながら貴方なんぞに、その犯人が捕りますかな。犯人を誰だと思っているのです。