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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
動坂三郎の身辺に局限されてくるのだった。
僕は海坊主のような大きな肉塊をもった動坂三郎の顔を暫く眺めていたが、そのとき不図考えついたことがあった。
「速水さん。ちょっと手を貸してくれたまえ」
「手を貸す? 何をするのかネ」
「この動坂氏を裸にしてみるのだ」
「ナニ、この人を裸に……」
呆れている速水を促して、僕は端の方から蒲団をソッとまくった。しかし僕は慌てて、蒲団を元のように被せた。
「どうしたんだ、君」
速水は怪訝そうに、僕の顔を眺めた。
「……そうだ。動坂氏を蒲団の間から畳の上に、引張り下そう。それがいい」
僕たちは苦心をして、動坂氏の大きな体だけを、畳の上にようやく引張りだした。僕は人間の身体がこんなに醜怪なものであることを始めて知った。
「速水君。これを見給え。嗜みのいい動坂氏は、寝ていても、防弾チョッキを外していないよ」
「ほほう、なるほど……」
動坂氏の寝衣や口腔を調べたが、黄金の鍵は見つからなかった。この上は防弾チョッキだと思ってそれを外してみた。防弾チョッキの裏は、真綿で蔽ってあったが、よく調べてみると、丁度胸骨の当るところに、小さなポケットがついていた。