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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

気がつくと、僕はお照の部厚な膝の上に抱きあげられていたのだった。僕は愕いて、彼女をつきのけて下に下りた。

……腕時計を見ると、今漸く午前九時になったばかり。うまうま一杯欺された。お照という女は、酔っては怒りやすく、醒めては濃厚すぎるほど世話好きになるまことに困った女である。

寝ていたところは、丸の内十三号館の街の科学者速水輪太郎の高塔の中。――昨夜は遉が不死身の僕も、速水と連れ立って、「深夜の市長」の待っているこの高塔まで辿りついたときはヘトヘトになってしまったのだった。折角の凱旋報告も何を云ったかハッキリ覚えていない。「深夜の市長」は病床の上から手をさし伸べて僕に固い握手をして呉れ、いろいろと褒めて呉れたようだったが、結局、T市の黄金の鍵は、明日市庁へ行って、高屋市長か中谷助役に自ら手渡すように頼まれたことだけは記憶している。それから後は、横に倒れて、ちょっと一と睡りと思ったのに、もう六時間も経ってしまったのだ。――室内にはお照の外に誰も見えない。

「ねえお照さん、『深夜の市長』は?」

「なにを云ってるのよオ。もちろん明けないうちに、お帰りになったわよ。