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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
「こいつは占めたぞ。この時計はいい塩梅に停らないでコツコツ動いている」
「時計がどうしたんです」
「うん、これは面白い」と老人は独りで悦に入りながら
「この時計の針を見て御覧よ。どうだネ」
「ははア」
「なにを見ているんだ。この指針がいま何時何分を指しているかというんだ。ね、今ちょうど十一時四十分を示しているじゃないか。ところでいま本当の時刻は……」と老人は隅の方をゴソゴソ探していたが、やがてこの土窟には不似合なピカピカする大型の懐中時計を探し出してきて、「今正に午前二時二十分だ。いいかネ」
「どうしたんでしょう。莫迦に僕の拾った時計は狂っていますね。僕の腕時計を見ましょう。……ああ、停っている」
手首を伸ばして見ると、僕の腕時計は停っていた。よく見るとそれも道理だった。硝子蓋がどこかへ飛んでしまっていた。先刻のされたときに飛んでしまったのにちがいない。
「そうだ、ちょうど二時間四十分遅れている。これは面白い。これだけの材料があれば、この事件の仕掛が分らんこともあるまい」
「どうも貴方は不思議な人ですね。まるで探偵のようなことを云うじゃありませんか。それに科学にもなかなか精しいようだし……」