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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
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そして一台の円タクを拾うと、それに乗って浅草の住居の方角へどんどん急がせた。
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その夜ほど、わが住居の寝床の心地よさを感じたことはなかった。戸締りをして、電気行火ですっかり温くなっている蒲団の中で足を伸ばすと価千金といいたいほど有難かった。
だが僕はそれから暫く、どうしても寝つかれなかった。僕の困った悪趣味の上に、一大警告がやって来たのだった。深夜の散歩が、遂に僕をしてたいへんな災難につまずかせてしまった。
業平橋横の怪しい殺人事件がまず眼前に浮んだ。死に切っている男の左の背後には、鋭い短剣らしいものがグサリとつき刺さっている。それを介抱するんだというインバネスの二人男は、僕をK・Oして、屍体もろとも何処かへ消えてしまう。後に気がついて、現場から拾ったのが、一個の新しいクローム側の懐中時計に、十銭のニッケル貨幣が三枚。とたんに警察に追われ、もう駄目だ、捕えられたかと思ったところを、「深夜の市長」と呼ぶ怪老人のために助けられた。その老人に見聞した事件を洗いざらい物語ってゆくうち、かの老人はニッケル貨幣に強い磁気のあることを発見して、これは怪しいと覘む。