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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
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自分だけよければそれでいいと云うんだろう。男らしくもない」
「君は僕に速水氏のところを教えないというんだな」
女はフフンと鼻で嗤って、意地悪そうに僕を見ていたが、
「誰も教えないとは云やしないわよ。……行きたけりゃ此処に書いてあるから、地図をよく見てゆくがいいわ」
そういうと女は、突然袖をたくしあげて、肉づきのいい真白な二の腕をヌッと、目の前につきだした。
「…………?」
僕は非常に面喰った。よく見ると、何時書いたものか、女の二の腕の裏側から腋の下へかけて、青いインキで詳しい地図が丹念に書きこんであった。
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言うのも恥かしいことながら、僕は力強いもののために動かされかけた。しかしその刹那、僕は勤め先の首尾のことばかりが気になった。どうやら甘美な雰囲気に一歩を踏みこんだものの、その甘美な味が感ぜられれば感じられるほど、なんだか恐ろしくなってきた。僕は事件に深入りしないうちに上司へ具申して、身の潔白を立てようと思ったのであった。
そこで僕は、萎縮しきった浅間信十郎になりきって、虎御前の腕に書きつけられた地図を思い出しながら、通り懸った円タクを拾って、寝静まった丸の内街に向けて走らせた。