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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

それが答だ」

「それが答?」

「そこのところを決めかねていた。極く僅かの計器の誤差だけれど、それを君の話によってチェックしないで計算すると、その時刻が午後七時四十九分十四秒と出るのだ。そいつは相当大きな誤差だ。君が来たので、丁度うまく補正ができた」といってその面上にかすかに悦びの色を浮べた。「いま手紙を書くから、待っていてくれ給え。――」

速水氏はチョコチョコと、机の前に走りよった。そして矢庭に、そこに積んであった書籍をドンドン床の上に落した。そしてその後に出来た空地の上へ、雑誌の頁を一枚ひき千切って、その上へ何かスラスラと認めた。

その暇に、僕は何気なく、先刻から速水氏が覗きこんでいた器械の前に立ち、そこに出ている接眼鏡らしいものの上に眼を持っていった。

――呀ッ、これは……。

と、僕はもう少しで大声をあげるところだった。そのレンズの底には、真昼のように明るい市街がアリアリとうつっていた。さっき円タクから下りたときに眺めたと同じく、T駅や、その前の広場やそれから丸ビルの方まで、実に明瞭にうつっているのだった。しかしそれは決して昼間の風景ではなかった。