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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

「君、何だか変だね。まさか酔っているんじゃあるまいね。マア兎も角上り給え」

と勧めたが、愛之助はそれを半分も聞かず、表へかけ出して、待たせてあった車に飛込むと、早く早くとせき立てて、行先も告げずに発車させてしまった。

それから彼は、次々と行先を変えて、二時間ばかり、殆ど東京中を乗り廻した。しまいには運転手の方がへこたれて、「もう勘弁して下さい」と云い出す程も。

「ネエ旦那、車庫が遠いんですから、もういい加減にして下さいませんか」

運転手は車を最徐行にして、くどくどとそんなことを云っていた。

ふと窓の外を見ると、一軒の大きな酒屋が、今丁度戸締りをしているのが見えた。

「降りるよ。降りるよ」

愛之助は突然車を止めさせて、十円近くの賃銀を支払って、車外に出ると、いきなり今戸締りをしている酒屋へ飛込んで行った。

「一杯飲ませてくれ給え」

「もう店を締めますから」

小僧がジロジロ愛之助の風体を眺めながら、無愛想に云った。

「一杯でいいんだ。グッと引かけてすぐ帰るから、君頼むよ」

余り頼むものだから、奥の番頭が口添えをして、小僧がコップ酒を持って来た。

「イヤ、桝で呉れ給え。