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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

「ハハハハ、分りましたか。これは僕の大切な武器なんです。空のピストルと血のりの膠玉、この二つの道具で、イザという時には、僕は態と相手に撃たれて、胸のシャツの中でこれをつぶして、死んで見せるのです。その方が相手を殺すよりは、安全だし、興味も深いではありませんか。僕が死んだと思って狼狽する相手の様子を眺めてやる丈けでも。ね、ハハハハ」

男はさもさも面白そうに笑いつづけたが、やっと笑いやむと、又饒舌を続ける。

「と云った丈けでは分らないでしょうが、実は昨晩、丁度あの血の痕のついている辺で、僕はあなたの旦那様の為に殺されたのですよ。旦那様はね、目がくらんでいらしったものだから、僕の上手なお芝居にだまされて、本当に殺人罪を犯したと思って、気違いの様になってしまいなすった。そして、やけくそになって、吉原のバアを呑み歩いていらっしゃる所を、僕の部下のものが御連れして、今ある秘密な場所に、おかくまいしてあるのですよ。つまり、ここでその人殺しが行われた痕なのです。併しね、僕が撃たれたのはお芝居でしたが、ここの家ではお芝居ばかりが行われる訳でもないのです。もっと恐ろしいことも、紅でない血の流れることも、ないとは限りません」