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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
もっともっとあなたに聞かせて置くことがあるのです。サア、こちらへお寄りなさい」
怪物の触手の様な猿臂がニュッと延びて、芳江の柔い頸筋を掴み、ねばっこい力強さで、彼の身近に引寄せた。芳江は身体中の力が抜けて、叫ぶことも、抵抗することも出来ず、ただもう悪夢にうなされている気持だった。
「僕は最初からこんな悪党ではなかった。ただ、あの威張り返った科学雑誌社長さまを、からかってやれという位の気持で活動写真の群集に混って、この顔を大きく写して見せたり、ある秘密な家で態と僕の変てこな姿を隙見させたりして喜んでいたのですが、そこへあなたの旦那様というものが出て来た。そして当の品川四郎よりも、僕というものの存在を不思議がり興味を持ち始めたのです。そこで、こいつ一つからかってやれと、あなたと声のよく似た娘を手に入れて、媾曳のお芝居をやって見せた所が、あの人はまんまと引っかかって来たのです。
ね、どうです。すばらしいじゃありませんか。僕もまさかこれ程うまく行くとは思っていなかった。それが、堂々たる科学雑誌の社長様と、探偵好きで猟奇家のあなたの旦那様と、全くおあつらえ向きの稽古台で、首尾よく成功したじゃありませんか。