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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

今様片手美人

サ、あちらの部屋に楽しい遊戯の席が準備してあります。行きましょう。……あなた想像できますか。その遊戯がどんな種類のものだか」

そして、哀れな小雀は、このえたいの知れぬ怪物の小脇にしめつけられたまま、別室へと連れられて行った。そこで何事が行われたかは、誰も知らない。だが恐らくは誰もが想像する通りであったに相違ない。我々は嘗つて青木愛之助が、松の梢から望み見た、あの血腥い遊戯を忘れることは出来ないのだ。

今様片手美人

右の出来事があってから、数日の後、気候を云うと、この物語の最初から已に半年程経過した五月も終りに近い、蒸し暑いある一日のことであった。

牛込の江戸川公園の西のはずれに、俗称大滝という、現在では殺風景のコンクリートの水門に過ぎないが、併しやっぱり大滝の様に水の落ちている箇所がある。武蔵野の西から流れて来た小川が、そこで滝になって、昔は桜の名所であった江戸川となり、大曲を曲って、飯田橋の所で外堀に流れ込んでいるのだ。

その大滝のそばには、数軒の貸舟屋があって、夏の夕涼に小舟を操る人も多く、郊外の一寸した名所になっているのだが、その日は今も云った晩春のむし暑い日であったので、もう近所の子供等が、舟を借り出して、浅い濁水に棹を操り、大滝の真下の渦巻き返す激浪と闘って打興じていた。