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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
「やっぱりそうでした。間違いなく青木芳江の腕です」
と低い低い声で云った。
「見違いはありますまいね」
波越氏も真剣な調子である。
「決して。この特殊の彫刻は、青木君の好みで、態々彫らせたものですから、芳江以外の人がはめている筈はないのです」
品川氏はそう云って、又瓶の置いてある所へ立って行って、入念に検査していたが、やがて、深い溜息と共に、瓶の白布を元の様にかぶせて、
「恐ろしいことだ。恐ろしいことだ」
と独言を云った。その調子が何かしら意味ありげに聞えたので、警部は逃さず、
「思当ることでもおありなのですか」
と尋ねた。
「あるのです。実はそれも御話しする積りで伺ったのですが、余り変なことなので、私の言葉を信じて頂けるかどうかをあやぶむのです」
「兎も角伺いましょう。無論犯人についてでしょうね」
「そうです。突然申上げると、こいつ気でも違ったのか、夢でも見ているのかと、御疑いなさるか存じませんが、この事件の裏には、恐らく私と寸分違わない、誰が見ても私と同じな、もう一人の私が糸を操っていると信ずべき理由があるのです」
「何ですって、おっしゃる意味がよく分りませんが」