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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

「フフン、こんなとこに乞食がいるもんか。それよりは、この高い塀を乗り越えている泥棒でも想像した方が、よっぽどいい景色だぜ」

彼等がそんな冗談を囁きながら坂を下って行くと、乏しい街燈の光の届かぬ暗闇に、何かしら蠢くものを発見した。鋭敏な新聞記者の神経にハッとある予感が来た。

「シッ、何かいる、隠れるんだ」

両人は石垣を這う様にして、前方をすかし見ながら、ソロソロと進んで行った。

泥棒だ。何とまあ、今その話をしていたばかりじゃないか。

丁度坂の下だから、石垣の一番高い箇所だ。その石垣の上に御丁寧にコンクリート塀が立っているので、全体の高さは二丈もある。その代りには最も光に遠く、彼等の仕事には屈強の場所だ。見ると塀の頂上から一本の縄が下り、それを伝って一人の覆面の男が今降りている所だ。下には二人の洋服姿の見張りの相棒が待構えている。

塀を降りる男は、何かべら棒に大きな荷物を背負っている。

「相手は三人だ。騒いじゃ危いぜ」

「だが、残念だなあ。ここの家へ知らせてやる間はないかしら」

「駄目駄目。門まで一丁もある」

二人の記者は蚊の鳴く様な声で囁き合っていたが、そこは商売柄、機敏に働く頭だ。