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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
「オイ、妙案があるぜ」
と写真部員が相手の肩を叩いた。
それから二三秒の間ボソボソと囁き合っていたが、やがて何を思ったのか、泥棒達の方へと、ジリジリ近づいて行った。十間、五間、三間、もうそれ以上進めば相手に気づかれるというきわどい近さに迫って行った。
覆面の男はやっと地上に降り立って、大きな荷物を下の男の背中に負わせた所だ。
「上首尾だったね」
「ウン、だが、べら棒に重かったぜ」
「そりゃ重いさ。慾と栄養過多でふくれ上っているんだからね」
覆面の男が巧みな手つきで、縄をさばいて、手元にたぐり寄せた。
その時である。ボンと異様な音がして、その真暗な屋敷町が、一瞬間白昼の様に明るくなった。
云うまでもなく、写真部員がマグネシウムを焚いたのだ。何ぜそんな事をしたか。泥棒を驚かせる為か。それもある。だが、彼は同時に、写真器のシャッターをも握ったのだ。つまり犯人の写真を撮ったのだ。
計画は図に当った。いくら何でも、そんな真夜中の往来に写真師が出現しようとは思わぬ。泥棒共はただ、異様な爆音と、目もくらむ火光に仰天してしまった。
中の一人は、用意のピストルを取り出して、暗闇に向って発砲しようとしたが、忽ち他の二人に押し止められた。