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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

昨夜奴さん確かにどこへも出なかった。僕は君達の会話を立聞きしていたが、あのA新聞の記者が偽写真でも作ったのでなければ、幽霊男の存在は確実になった訳だ」

「偽写真でないことは一見すれば分るよ」警部は面喰って答える。「それに、昨夜二時頃、マグネシウムを焚いたことは、宮崎家の召使にも気づいたものがあって、間違いはない。……だが驚いたね、君、あすこの社員なのかね」

「ウン、まだ入社して半月にもならない。だが、紹介者がいいので、社長すっかり信用してしまって、僕が宿に困っている体を装うと、当分家へ来て居給えという事になったのさ」

「で、愈々君も疑いがはれた訳だね」

「ウン、この目で見ていたんだからね。だが実に不思議だ。どうして、そんな同じ顔の人間が出来たのだろう。古今東西に例のないことだ。君にしたって、僕が品川の一人二役を疑ったのを無理だと思うまい」

「思わないとも。実はさっき、そのことを総監から伺って、君の明察に感じ入った程だ」

「恐ろしいことだ」明智は心から、恐ろしそうに云った。彼の如き人物には珍らしい言葉である。

「波越君、これは決してただ事ではないよ。数百年数十年の伝習が作り上げた人間の常識だ。