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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
恐ろしき父
大実業家の自負心も、愛嬢の生命には換えられぬのだ。
その夜、我が明智小五郎は、富豪の懇篤なる招きを受けて、宮崎邸の門をくぐった。
つまり宮崎氏は怪賊の挑戦に応じたのである。
恐ろしき父
文面の「明日正午」という、その正午を過ぎると、だが、常右衛門氏も流石に不気味でたまらなかった。夫人や当の令嬢には、明らさまに話した訳ではないが、邸内の空気や、常右衛門氏のそぶりで、彼女等にも大体の察しはついていた。
一時間、二時間と時は過ぎて行ったが、主人夫妻召使などの、心配や恐れは、増すばかりであった。何時? 誰が? 何処から? 凡てが不明なのだ。掴み所のない敵。どこにどう防備を施したらいいのか、まるで見当もつかぬ。それが人々を実際以上に怖がらせた。
午後三時、令嬢雪江さんの私室には、雪江さんを中にして、真面目な二人の護衛兵、父常右衛門氏と、探偵明智小五郎とが雑談を交わしていた。病身の母夫人は昨夜一睡もしなかった疲れの為に、別室に引取っていた。
雪江は妙齢十九歳、宮崎氏の一粒種だ。どちらかと云うとお父さん子で、厳格な程作法正しい母夫人には、遠慮勝ちだが、お父さんには平気で甘える。