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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
併し、明智はなぜか、ひどく困惑の体で、却って宮崎氏の顔色を読もうとする如く、じっと相手を見つめた。
「虚勢。如何にも、虚勢でしょう。……だが、あれは、どうしたというのだ」
裏門の方に、騒がしい人声、それが段々高まって来る。
書生の青山が飛込んで来た。
「裏門の側で怪しい奴を捕えました。ピストルを持っているそうです。明智さんを御呼びしてくれということでした」
それを聞くと主客共に立上がった。
「明智さん、見て来て下さい。厳重に検べて下さい。ここはわしが引受けます」
明智は立去ろうとして、なぜか一寸躊躇した。本能的にある不安を感じたのだ。併し、行かぬ訳には行かぬ。彼は常右衛門氏をじっと見つめて、
「では、お嬢さんを御願いします。側を離れない様にして下さい」
くどく念を押して、彼は書生の案内でドアの向うに消えた。あとに残った父と娘とは、真青な顔を見合わせて、暫らく黙り込んでいたが、とうとう、雪江さんが、たまらなくなって幼児の様に叫んだ。
「お父さま、私、こわい」
彼女は、今にも倒れそうに気力がない。
「心配することはない、こうしてわしがついているではないか。それに、この部屋のまわりは、刑事や書生で取巻いているといってもよい程だ。