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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

明智小五郎です。僕は大変な失策をやったのです、あなたを例の幽霊男だと誤解してしまって。……しかし、さっき電話口へ出たのはあなたではなかったのですか」

「ヘエ、電話ですって。それは何かの間違いでしょう。僕に電話はかかった覚えはありませんよ」

そんな話をしている時、実に途方もないことが起った。と云うのは、襖の外に、もう一人品川四郎の声が聞えて来たのである。

「俺は夕方から外出なぞしないじゃないか。今俺が帰って来たなんて、お前は奥の間で俺が調べものをしていたのを知らないのか。その帰って来た俺というのはどこにいるんだ」

叱られているのは婆やだ。だが、何という変挺な叱り方であろう。

明智はさてはとギョッとして、矢庭に立上り、目の前の品川に飛びかかろうとした。

だが張合のないことには贋の品川は平気で笑っている。何というふてぶてしさだ。

そこへ、襖の外の声の主が、血相をかえて飛込んで来た。見ると、一人は自分と寸分違わぬ男、もう一人は見も知らぬ老人だ。

「君達は一体全体何者だ」

彼は居丈高に呶鳴りつけた。

「オヤ、これは不思議。貴様、俺の留守宅に忍込んで主人面をしていたんだな。