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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

刑事部長さんもいたよ」

「じゃ、一つ巡査君に、このトランクを運ぶ手伝いを頼んでくれ給え。総監室へ持込んで貰い度いのだ」

「心得た。オイ君、一寸この車夫の御手伝いをしてやってくれ給え」波越氏は、ホールに居合わせた二人の警官に命じて置いて「残念だが、僕は行啓の御警衛のことで、急用があるんだ。総監室で詳しく話して置いてくれ給え。間に合ったら、僕も話を聞きに帰って来るから」

波越警部と別れた明智小五郎は、大トランクを追って、総監室へ上って行った。

「我々は君を探していた所だったよ。明智君」

総監は、彼の顔を見ると、磊落に云った。

「例の白蝙蝠事件が、一向にはかどらないのでね。だが、妙な物を持込んで来たじゃないか。そのトランクは何だね」

「何か御用談中ではなかったのですか」

明智が、総監と向い合って腰かけている刑事部長を見ながら尋ねた。

「イヤ、我々の話は今すんだ所だ」

「それでは、甚だ恐れ入りますが、総監お一人にお話し致したいことがありますので、暫く……」

「オイオイ、明智君、ここにいるのは、君も知っている刑事部長さんだよ。失礼なことを云っては困るね」

「ですが、実は非常に重大な事柄だものですから、総監にお話し申上げるさえ、躊躇する程なんです。