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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

失礼ですけれど、暫くお人払いを……」

明智はひどく云いにくそうだ。

「明智君、今日はいやに勿体ぶるんだね」刑事部長は笑いながら立上がった。「併し、僕はあちらに用事もあるから、又あとで来ます。じゃ明智君どうか」

彼は云い捨てて、総監室を出て行った。

「サア、聞こう。その重大事件というのは一体何事だね」

赤松総監は、この天才探偵の、奇抜な所業をひどく面白がっているのだ。

「完全にお人払いが願い度いのです」

明智は強情である。

「では」総監は益々面白がって「オイ、君、一寸あちらへ行って居給え」

総監室の入口に陣取っていた受附係が追払われた。あとは文字通り二人切りだ。

「ドアの鍵をお持ちでしょうか」

「鍵? 君はドアに鍵をかけようというのかね。そいつはどうも」総監は笑い出して「確かその、受附の机の抽斗に這入っていた筈だが」

明智は鍵を探し出して、内部から入り口のドアに鍵を卸した上、鍵穴には鍵を差したままにして席に戻った。

「このトランクの中の品物を、ごらん願い度いのです」

「ひどくかさばったものだね。開けて見給え」

トランクというのは、内地の旅行などには滅多に使用せぬ、鎧櫃の様な極大型のもので、人一人這入れる程の大きさである。