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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

なぜと云って、青木愛之助は、今では元の姿を失って、明智小五郎に改造されている。明智を青木と感違いするのは無理もないことだ。それに、幽霊男は、贋明智の青木が逮捕されたとは知る由もなく、一方本物の明智がこの空家を逃げ出したのも、まだ気附いていないのだから、今外から這入って来たのが、贋の明智即ち青木愛之助だと思い込んでいるのは、当然のことなのだ。

それと悟ると、明智はおかしさを堪え、咄嗟の機転、賊の屡々用いたトリックを逆用して、さも青木らしく装いながら、

「大変です。警察がこの隠家を悟ったらしいのです。イヤ、悟ったばかりではない。もうとっくに、敵の廻しものが、姿を変えてここへ這入り込んでいるのです」

と惶しく囁いた。

「え、警察の廻しものが?」贋品川はサッと顔色を変えた。「そいつはどこにいるのだ」

「ここにいるのです」

「ここというと?」

「この部屋にです」

「オイ、冗談を云っている場合ではないぜ。この部屋には、君と僕の外に誰もいないじゃないか。それとも、あの人形共の中に、そいつがいるとでも」

幽霊男は、不気味そうに、群がるはだか人形を見廻した。

蝋細工の人形共は、黒い目をパッチリ開いて、まるで生きている様に、ジロジロとこちらを眺めている。