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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

「でしょう、僕はここが非常に気に入っているんですよ」

という様なことから、二人の間に段々話がはずんで行った。愛之助は酒に強くないので、チビチビ嘗めた二杯のウィスキイで、もう酔ってしまって、ボンヤリと、いい気持になっていた。そこで、彼は例によって「退屈」について語り始めたものである。

相手の紳士は、同感と見えて、成程成程と肯きながら聞いていたが、暫くすると、非常に婉曲な云い廻しで、愛之助の身分を尋ねるのだ。青木は酔っていたものだから、知らず識らず相手の調子に乗せられて、彼の身の上を語っていたが、流石にふと気づいて、変な顔をして尋ねた。

「オヤオヤ僕は自分のことばかり喋っていましたね。ところで今度はあなたの番だ。ハハハハハハ御商売は」

すると相手の紳士は、一寸とりすまして見せて、意外なことを云うのである。

「私はね、これで一種のサンドイッチマンですよ。これからあなたにビラを配ろうという訳なんです」

何とまあ立派なサンドイッチマンであろう。

「イヤ決して冗談ではありません」と紳士は続けるのだ。「私は実は、あなたの様な猟奇……者ですかね、つまり好奇心に富んだお方を、こうしてカフェなどを歩き廻って探すのが役目でしてね。