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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

で、青木は、九段坂を上る度に、槐多の小説を思い出し、現在では当時とはまるで変っているけれど、道路のわきの石垣を、変な感じで眺めないではいられぬ次第であった。

「あの石の形が、少し他のと違う様だが、若しや今でもあの下に何か隠してあるんじゃないかな」

愛之助は事実と小説を混同して、そんな妄想を楽しむ体の男なのである。

九段の見世物風景は、誰でも知っていることだから細叙することもないが、現在ではすたれてしまって、どこかの片田舎で僅かに余命を保っている様な、古風な見世物を日本中の隅々を探し廻って寄せ集めた、と云う感じであった。

地獄極楽からくり人形、大江山酒天童子電気人形、女剣舞、玉乗り、猿芝居、曲馬、因果物、熊娘、牛娘、角男、それらの大天幕張りの間々には、おでんや、氷屋、みかん水、薄荷水、十銭均一のおもちゃ屋に、風船屋などの小屋台が、ウジャウジャとかたまっている。その中を、何の気か、ほこりを吸って、上気して、東京中の人間が、ウロウロ蠢いているのである。

ある因果物の小屋の前、そこには、時々幕を上げてチラリと中を見せるものだから、黒山の人だかりで、その群集の一番うしろの列が、反対側の食物屋台とすれすれにまで、ふくれているので、そこの道は、人一人、やっと通れる程の隙間しかない。