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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
「芳江、一寸これをごらん」
愛之助は、まだ幾分細君を疑っていたので、この写真で彼女をためして見ようと、ふと意地悪く思いついたのである。
「マア、品川さんね。S博士の通訳をなさるのね」
「それはいいんだが、うしろの方から覗いている、この顔をごらん」
と云って、指で幽霊男を示した。
「そうね、そう云えば品川さんそっくりね。マア、よく似てるわ」
オヤオヤ、何とほがらかなことだ。
「実はね、品川四郎と一分一厘違わない男が、(しかもそれが悪者なんだ)どこかにいるのだよ、僕はそいつに度々逢ったことがある」
と、この機会に、読者の知っている大略を話して聞かせた。(赤い部屋の隙見の件は都合上省略したけれど)
外は暮れ始めた鼠色だった。大入道みたいな樹立が、モクモクと窓の外を走って行った。天井の電燈が外の薄闇とゴッチャになって、妙に赤茶けて見え、車内の人顔に異様な隈が出ている。その中で、彼はせいぜい凄味たっぷりに、時々じっと相手の目を見つめたりして、それを話したのだ。
「マア、気味が悪い。何か企らんでいるのでしょうか」
彼女は幾分蒼ざめて見えた。だが、誰にしたって怖がる話だ。