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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
だが、どうも死体の様な大きなものではない。
愛之助の好奇心は極点に達した。
「アア、あれはおがんでるんじゃない。接吻しているんだ」
男の仕草がふとそんな感じを与えた。だが、一体全体何に接吻しているのだ。死体にか? 辛抱強く見ていると、遂に男が身体を動かした。今まで隠れていた小テーブルと、その上の物体があらわになった。
同時に松の木がガサガサと音を立てて、烈しく揺れた。愛之助が驚きの余り、危く枝を辷り落ちようとしたからだ。だが、彼は咄嗟に気を取り直して、身体の位置を安全にして、その物体を熟視した。
そこには人間の、まだ若い女の、首丈けがテーブルにのせてあったのだ。しかも、今胴体から切離したばかりの様に、生々しく、血のりにまみれて。
愛之助がそれを一目見た時、あんなにも驚いたのは、一刹那、若しやその首が妻の芳江のではないかと思ったからだが、すぐそうではない事が分った。見も知らぬどこかの娘さんだ。
幽霊男は、見慣れぬ型の金属製の燭台を手にして、それをさしつけ、さしつけ、つくづくと女の首に見入っていた。
首は目を半眼にして、眉を寄せ、口を開き、歯と歯の間に舌の先が覗いている。