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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

他人の物を胡麻化したのとは違う、まあ啓坊ならそのくらいな事はするかも知れない、勘当と云っても恐らく一時の懲らしめのためなので、直きに許されるのであろうから、余りおおびらに出歩かないようにして、内々で交際するのであったら、大目に見てもよいではないか、―――と、そう云って、ただ姉ちゃんには話さない方がよい、姉ちゃんに話すと、きっと兄さんに話すに違いないから、と云うのであった。

幸子は本家の遣り方に楯を突くようで悪いけれども、何か今度の法事には充たされないものを感じていたので、一つにはそれを満足さすため、一つには久々で迎える姉を慰労するためにもと、善慶寺の集りのあとで、自分たち姉妹だけでささやかな催しをすることを思い付いた。で、法事の翌々日、廿六日の昼に、亡き父母にゆかりのある播半の座敷を選び、貞之助にも遠慮して貰って、姉と自分たち三姉妹の外には富永の叔母とその娘の染子だけを招くことにした。そして余興には、菊岡検校と娘の徳子に来て貰い、徳子の地、妙子の舞で「袖香炉」、検校の三味線、幸子の琴で「残月」を出すことにして、急に半月ばかり前から、幸子は家で琴の練習を、妙子は大阪の作いね師匠の所へ通って舞の練習を続けていた。