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だっせんむすこ
脱線息子
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页
未だ縁談はこれといって問題にするほどのがないそうだから、然う急ぐにも及ばない」
「いゝえ、あなた、手廻しは早いに越したことはございませんよ」
と母親が口を出して、新太郎君の意向を代表してくれた。
「まあ、待ちなさい。何れその中然るべき人を通して御両親へ申入れますから、宜しくお執成しをとまで漕ぎつけたのが一昨日のことで、それから昨日の騒ぎさ。松浦さんは大慌てをして帰ってしまった。俺はもう少し確かなところを聞いて置きたかったが、そんなことを言っている場合じゃない。肝心のお父さんが家中を呼び寄せるような容態では、まあ、好い塩梅に持ち直すにしろ、万一このまゝいけなくなるようなら尚おのこと、こゝ当分は一頓挫だ」
「あの病気は二三日持てば取り止めるそうですが、後が長いそうでございますよ」
「何ういう御病気ですか?」
と新太郎君が訊いた。
「脳溢血さ。松浦さんも然うだろうと見当をつけて案じていたが、果して一番いけない奴だった」
と父親は帰着後間もなく電話で問い合せたのである。
「そうして何んな御容態ですか?」
「未だ意識不鮮明だそうだ。余程重いらしい。ところで先刻言った見舞いのことだが、俺も唯二週間だけれど、松浦さんにはあんなに御懇意に願っていたんだから、電話をかけた丈けでそのまゝ黙ってもいられない。