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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

「分っているなら、もう宜いじゃないか?」

「いや、決して後ろ暗い相談じゃないんだ。君、君」

「いけないよ。こゝで話し給え」

と寛一君は伯母から言い含められていたので、いつになく強硬だった。

「こんなところじゃ話せない」

「話せないことなら止めにし給え」

「君は同情がないぞ」

と新太郎君はイラ/\したけれど、汽車が動き出したからもう仕方がなかった。

滅多に反抗したことのない寛一君は少し気の毒になって、

「君、マザーが待っているんだよ」

と弁解の積りで言った。

「…………」

「君は憤っているのかい?」

「何あに、僕は今まで迷惑をかけ通しだからね」

「そんなことはないよ」

「僕は明日から生れ変って直ぐに店の仕事を始める」

「それが何よりだ。マザーは喜ぶぜ」

「ついては一つ打ち合せて置きたいことがあるんだから、新橋へ着いたら、一寸で宜いから附き合ってくれ給え」

「駄目だよ。清吉が迎えに来ている」

「君、それじゃ今日のは悉皆予定の行動かい?」

と新太郎君は忽ち血相を変えた。

「いや、然ういう次第じゃないけれど、帰れば大抵この汽車だからね」

「宜いよ」

「何が?」

「昨日電報が来た時から屹度こんなことだろうと思っていたんだ」