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がいとうからみたしんとうきょうのりめん
街頭から見た新東京の裏面
杉山 萠円
「九州日報」1924(大正13)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,546 字 · 178 页
喰べる処は大抵椅子卓子式で、腰をかけるとすぐに、
「何に致しましょう……畏まりました……エエ、五十銭に八十銭に一円……一円二十銭と四通りで……」
とあたりに響く大きな声で正札を云う。これに屁古垂れる人間は浅草で物を喰う資格はない。
ギリギリ決着のところ、浅草で正札の付いていないものは、「女」だけと云ってもいい位である。
こうした大文字の正札式は浅草ばかりではない。神田、本郷、牛込あたりの第二流の繁華な通りはもとより、銀座あたりの一流どころにもポツポツ見受けられる。しかしこの式の最も盛なのは浅草で、ここを遠ざかるに従ってチラリホラリとなって行くところを見ると、この式の開山は矢張り浅草で、ここを中心として東京の商売は「現実化」して行くのではあるまいかと考えられる。
そうして仲見世の実地試験応用の無言の行は、現実式中の現実式と云うべきであろう。
こんな事を云うとその道の人に笑われるかも知れないが、論より証拠、こうした正札一点張りの店で買ったり喰ったりしたあと、正札の付いていない店へ行くと、何となく不安心な上に、一々店の人に出してもらったり、価格を聴いたりしなければならぬので、恐ろしく面倒な気持がする。