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がいとうからみたしんとうきょうのりめん

街頭から見た新東京の裏面

杉山 萠円

「九州日報」1924(大正13)年10~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,546 字 · 178 页

青空文庫

一円七十銭争奪戦

その後気を付けたら、方々の縁日でやっているので、益驚いた。とても「無言正札主義」なぞの及ぶところでない。つくづく日本は広いと思わせられた。

一円七十銭争奪戦

前に述べた「無言の正札主義」と「おしゃべりのゴマカシ流」とは、現代式営業の両極端を見せている事になる。これに観音様の「無言の無正札」式営業振りと、境内の乞食の稼ぎ振りと、チンピラの掻っ泄い生活、立ちん坊の働き具合まで加えると……大きく云えば人間世界……小さく見れば全東京のあらゆる商売振りを代表したものが、十八間四面のお堂のまわりに集まっている事になる。

但、これは昔からあるので、今度震災後特に眼に付いたのは、その売り物の価格が向上した事と、そのねらっている客筋が違うことである。

毛皮売りは大道商人の中でも一番高価いものを売るのだそうだが、まだこのほかにも一円以上のものを大道で売るのが沢山居る。

万年筆売り(一円位から十四五円)、友禅のセリ売り(負けたところで一丈五尺一円二三十銭から三四円まで)、ガスの靴下やメリヤスのシャツの糶売り(前同様で一円から四五円まで)、銀台鍍金の銀眼鏡と鎖売り(三四円から七八円)、水晶の印形売り(同じく一円以上)なぞ数え立てて来ると際限もない。