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がいとうからみたしんとうきょうのりめん
街頭から見た新東京の裏面
杉山 萠円
「九州日報」1924(大正13)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,546 字 · 178 页
宵越しの銭溜め
……というのは彼等の「かお」が利かなくなった事である。利くにも利かぬにも、町は茫々たる焼け野原となり、どっちを見ても見ず知らずの赤の他人となって、泣いてもわめいても追っ付かなくなったことである。
宵越しの銭溜め
東京に住んだ人は知っているであろう。壁一重向うは赤の他人である。引っ越しソバを配るだけの義理が済めば、あとはどこの馬の骨か牛の糞かといった風である。うっかりすると、借りたおして引っ越しされるような心配があるかと思うと、隣の喧嘩を二階から見ている冷やかな面白さもある。これを極端に云うと、「人を見たら泥棒」式で、すべてのつき合いが何となく現金式である。そこが又東京の住まいよいところで、同時に住みにくいところともなっている。これは東京が江戸の昔から諸国人の集まりであるのに原因していること云う迄もない。
然るにその中でも純江戸ッ子だけは、「顔」という人類最高のパスを持っている。このパスの利くところは町内や市場、又は出入りの旦那やおやしきは勿論のこと、大きいのになると随分遠方の隅々まで利く。しかもこのパスは金ばかりでなく、いろんな意味にもパスとして使える。