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とおのものがたり
遠野物語
柳田 国男
「遠野物語」柳田國男、1910(明治43)年6月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,063 字 · 79 页
六
七
二里以上の迂路なり。
○山口は六角牛に登る山口なれば村の名となれるなり。
六 遠野郷にては豪農のことを今でも長者という。青笹村大字糠前の長者の娘、ふと物に取り隠されて年久しくなりしに、同じ村の何某という猟師、或る日山に入りて一人の女に遭う。怖ろしくなりてこれを撃たんとせしに、何おじではないか、ぶつなという。驚きてよく見れば彼の長者がまな娘なり。何故にこんな処にはおるぞと問えば、或る物に取られて今はその妻となれり。子もあまた生みたれど、すべて夫が食い尽して一人此のごとくあり。おのれはこの地に一生涯を送ることなるべし。人にも言うな。御身も危うければ疾く帰れというままに、その在所をも問い明らめずして遁げ還れりという。
○糠の前は糠の森の前にある村なり、糠の森は諸国の糠塚と同じ。遠野郷にも糠森・糠塚多くあり。
七 上郷村の民家の娘、栗を拾いに山に入りたるまま帰り来たらず。家の者は死したるならんと思い、女のしたる枕を形代として葬式を執行い、さて二三年を過ぎたり。しかるにその村の者猟をして五葉山の腰のあたりに入りしに、大なる岩の蔽いかかりて岩窟のようになれるところにて、図らずこの女に逢いたり。