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とおのものがたり
遠野物語
柳田 国男
「遠野物語」柳田國男、1910(明治43)年6月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,063 字 · 79 页
七〇
七一
オシラサマというはこの時より成りたる神なり。馬をつり下げたる桑の枝にてその神の像を作る。その像三つありき。本にて作りしは山口の大同にあり。これを姉神とす。中にて作りしは山崎の在家権十郎という人の家にあり。佐々木氏の伯母が縁づきたる家なるが、今は家絶えて神の行方を知らず。末にて作りし妹神の像は今附馬牛村にありといえり。
七〇 同じ人の話に、オクナイサマはオシラサマのある家には必ず伴ないて在す神なり。されどオシラサマはなくてオクナイサマのみある家もあり。また家によりて神の像も同じからず。山口の大同にあるオクナイサマは木像なり。山口の辷石たにえという人の家なるは掛軸なり。田圃のうちにいませるはまた木像なり。飯豊の大同にもオシラサマはなけれどオクナイサマのみはいませりという。
七一 この話をしたる老女は熱心なる念仏者なれど、世の常の念仏者とは様かわり、一種邪宗らしき信仰あり。信者に道を伝うることはあれども、互いに厳重なる秘密を守り、その作法につきては親にも子にもいささかたりとも知らしめず。また寺とも僧とも少しも関係はなくて、在家の者のみの集まりなり。その人の数も多からず。