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とおのものがたり
遠野物語
柳田 国男
「遠野物語」柳田國男、1910(明治43)年6月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,063 字 · 79 页
七二
七三
辷石たにえという婦人などは同じ仲間なり。阿弥陀仏の斎日には、夜中人の静まるを待ちて会合し、隠れたる室にて祈祷す。魔法まじないを善くする故に、郷党に対して一種の権威あり。
七二 栃内村の字琴畑は深山の沢にあり。家の数は五軒ばかり、小烏瀬川の支流の水上なり。これより栃内の民居まで二里を隔つ。琴畑の入口に塚あり。塚の上には木の座像あり。およそ人の大きさにて、以前は堂の中にありしが、今は雨ざらしなり。これをカクラサマという。村の子供これを玩物にし、引き出して川へ投げ入れまた路上を引きずりなどする故に、今は鼻も口も見えぬようになれり。或いは子供を叱り戒めてこれを制止する者あれば、かえりて祟を受け病むことありといえり。
○神体仏像子供と遊ぶを好みこれを制止するを怒りたもうことほかにも例多し。遠江小笠郡大池村東光寺の薬師仏(『掛川志』)、駿河安倍郡豊田村曲金の軍陣坊社の神(『新風土記』)、または信濃筑摩郡射手の弥陀堂の木仏(『信濃奇勝録』)などこれなり。
七三 カクラサマの木像は遠野郷のうちに数多あり。栃内の字西内にもあり。山口分の大洞というところにもありしことを記憶する者あり。