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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
崩れた門の側に六畳敷くらいのバラックを作って、夫人は七人の子供さん方とともにそこに起き臥ししておられる。誰にも怪我はなく、火災をも免れられたのは何よりもっておめでたいが、もちろん今しばしの間のことであろうとはいえ、昨日までの金殿玉楼の生活に引きかえてのこの不自由極まる有様に、思わず涙ぐまずにはおられなかった。しかしこれはひとり深沢君ばかりではない。知る知らぬの罹災者のすべてが皆これなのだ。いやさらにこれよりも数倍、数十倍ひどいのが多いのだ。「奥さん本当に御不自由でしょうが、世の中には何不足のない立派な家を持ちながらも、わざわざテント村などといって海岸や山上の窮屈な仮りの住居に、変った気分を味わいたがる人も多い今日です。あなたがたは求めずしてその境遇を体験するの機会を得られたのだ。まあそのくらいの気分で御辛抱なさい」
これはあえてからかいのつもりでいったのではなかったが、後で思うと先方では果してどんな意味で受け取られたかと、ひとり苦笑せざるを得なかった。
間に合せのバラックや焼け亜鉛板を寄せかけたサンカ小屋のようなものは大方出来ているが、東京から見ればよほど後れている。