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しんさいこうき

震災後記

喜田 貞吉

「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页

青空文庫

十月七日

なにぶんにも上方の人は呑気だ。一時は新聞のおびただしい号外に煽られて、非常に厚い同情心を発揮するに至ったのは結構であったが、何しろ自分が親しくその渦中にいなかったものに、そういつまでも緊張した気分が続く訳のものではない。下旬には早くもある会から、琵琶湖の船遊びを催すから、出て来ぬかとの案内状を受け取ったほどであった。それに対して自分は、このさいのことではあり、ことに近親の人々が現に避難所にまごついてまだ落ちつく所を得ず、家族どもにしてからが今なお雨漏りをも防ぎかねた破屋に起臥しているのを思うても、自分としてそんなゆっくりした気になれぬとお答えしたことをここに書き止めておく。

十月七日(日)

昨夜所用あって大阪へ来たので、その足ですぐ梅田駅から午後八時五十分の東海道急行で東京に帰る。震災後始末のためだ。途中二ヵ所の徒歩連絡には閉口だが、この間の篠の井廻りでかなり弱らされたのと、一つは東海道線の被害をも視察したいというのがこの東海道線を選んだ理由だ。車室はすでに大阪から二、三等とも満員で、立ち往生の人が多い。沼津まではすべて普通の進行だが、それから先は線路が傷んでいたり、間に合わせの修繕の場所が多かったりするので、その進行ののろさったらない。