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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
小学校が潰れて間に合せの露天学校を設けているのだ。こうしてでも教育は怠ってはならぬものと、つくづくありがたく感じた。
地震で馬入川の鉄橋が落ちて、やっと出来た仮橋がまた洪水で流れてしまって、ここも今なお徒歩連絡だ。おりからの雨あがりで汁粉の鍋へ足を踏みこんだようなぬかるみを通って、やっと川東の仮駅にたどりついた。
今度は客車がややゆっくりしているので、前ほどの混雑はないが、それでもなお車窓から泥靴で飛び込む勇猛な紳士が少くない。車掌は声を張りあげて「三等のお客は三等室へお乗り下さい」とふれて歩行いている。震災気分は東へ近づくに従ってますます濃厚になる。
横浜には二十日見ぬ間に急ごしらへのバラックが大分多くなっている。しかし全くのサンカ小屋のようなものが多く、復興も容易でないらしい。なにぶん災害が東京以上にひどかったのと、世間の注意が東京に集中して比較的他に疎かなのとで万事後れているものと見える。
午後三時四十五分東京着。普通ならば大阪から十二時間と四十分で着くはずの急行車が、約十九時間を要したのだ。宅へ帰ってみると瓦が落ちた屋根も、壁の落ちた土蔵も、まだ前の応急手当のままだ。