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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
十月十七日
やがて赤褐色の入道雲とも見るべき濃煙が捲き上ると見ると、轟然たる爆声が地響きしてやって来る。二発また三発、赤煉瓦の残骸はあともなく崩されてしまった。商業教育最高の学府として、多年わが実業界幾多の俊秀を送り出したこの宏大なる建物も、今は見る影すらなくなってしまったのだ。感慨無量とはこんな時に用うる語であろうと思われた。
十月十七日(水)
十二日ごろから職人がやっと来だして、いよいよ修繕に取りかかった。差当りまず崩壊した土蔵の残りの土を除いて丸裸となし、鉄網を張ってコンクリートで塗り固めるという手っ取り早いところから着手する。十三日から瓦斯が通じ出した。炊事の方も便利になる。
だんだん修繕の方法も立って来たので、出入りの棟梁に万事を一任して、午後三時五十分上野発の汽車で京都に行く。先日の東海道の徒歩連絡に懲りて、今度は再び九月西下のさいの道を択んだのだ。上野駅もともかく開かれた。乗客の混雑も前ほどのことはないので、予定では篠の井・名古屋の乗りかえで、明日の午後一時前には京都に着くべきはずであったが、相変らず駅ごとの昇降が手間取れる。午後十一時五十分篠の井発の名古屋行に連絡すべきはずのものが、午前一時ごろになってやっと同駅に着いた。