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せいねん

青年

森 鴎外

「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页

青空文庫

十七

と言い足した。

「もう冷かすのはよし給え。知らない人ばかりの宴会だから、恩典に浴したくなかったのだ。僕はこんな会へ来たら、国の詞でも聞かれるかと思ったら、皆東京子になってしまっているね」

「そうばかりでもないよ。大臣の近所へ行って聞いていて見給え。ござりますのざに、アクセントのあるのなんぞが沢山聞かれるから」

「まあ、どうやらこうやら柳橋の芸者というものだけは、近くで拝見ができそうだ」

「なに。今頃出し抜に掛けたって、ろくな芸者がいるものか。よくよくのお茶碾きでなくては」

「そういうものかね」

こんな話をしている時、曽根が座敷の真中に立って、大声でこう云った。

「諸君。大臣閣下は外に今一つ宴会がおありなさるそうで、お先きへお立ちになりました。諸君に宜しく申してくれと云うことでありました。どうぞ跡の諸君は御ゆっくりなさるように願います。只今別品が参ります」

所々に拍手するものがある。見れば床の間の前の真中の席は空虚になっていた。

殆ど同時に芸者が五六人這入って来た。

十七

席はもう大分乱れている。所々に少さい圏を作って話をしているかと思えば、空虚な坐布団も間々に出来ている。