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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
「なる程旧人と新人ということは、女の事にばかり云ってあるようですね。そんなら僕も新しい人と云いましょう。新しい人はつまり道徳や宗教の理想なんぞに捕われていない人なんでしょうか。それとも何か別の物を有している人なんでしょうか」
微笑が又閃く。
「消極的新人と積極的新人と、どっちが本当の新人かと云うことになりますね」
「ええ。まあ、そうです。その積極的新人というものがあるでしょうか」
微笑が又閃く。
「そうですねえ。有るか無いか知らないが、有る筈には相違ないでしょう。破壊してしまえば、又建設する。石を崩しては、又積むのでしょうよ。君は哲学を読みましたか」
「哲学に就いては、少し読んで見ました。哲学その物はなんにも読みません」正直に、躊躇せずに答えたのである。
「そうでしょう」
夕の昌平橋は雑沓する。内神田の咽喉を扼している、ここの狭隘に、おりおり捲き起される冷たい埃を浴びて、影のような群集が忙しげに摩れ違っている。暫くは話も出来ないので、影と一しょに急ぎながら空を見れば、仁丹の広告燈が青くなったり、赤くなったりしている。純一は暫く考えて見て云った。
「哲学が幾度建設せられても、その度毎に破壊せられるように、新人も積極的になって、何物かを建設したら、又その何物かに捕われるのではないでしょうか」