轻松读懂日语经典作品
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
すぐ芝居小屋へ駈けつけましょう。警察へ知らせましょう」
二郎は今度は、落ちつき払っている明智の態度に、イライラし始めた。
「イヤ、それはよしましょう。あなたはお宅へ御帰りなさい。僕もすっかりやり直しだ」
明智は妙なことを云う。
「どうしてですか」
「僕はそんな普通の警察官のやり方を好まないのです。手遅れと分っている賊を今更追駈けて見た所で何の甲斐がありましょう。あの奸智に長けた賊のことだ、今夜の様なずば抜けた冒険の裏には、綿密細心な逃亡手段が準備されているに極っています。今頃あの小屋を包囲して見た所で、無論手遅れ、中はもぬけの空です」
「では、さしずめ採るべき手段は?」
「家へ帰ることです。そして寝てしまうのです。ただ明智が生きていたなんて、家族の方にも決して云っちゃいけませんよ。それが最も大切な点です。あとは何もやきもきなさることはありません。僕に任せて置いて下さい。もう音吉爺さんの変装も駄目になってしまったから、僕は全く別の第二の手段に……」
突然明智の言葉が途切れた。ライターの淡い光に、彼の表情が見る見る緊張し、云い知れぬ喜びに輝いて行くのが見えた。