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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
殺人映画
「この部屋では駄目です。別に私のスタディオが出来ているのですよ。穴蔵というと、気味が悪いですが、ナアニ、この家の元の持主が作って置いた、小さな地下室があるのです。そこは、昼でも真暗なものですから、スタディオにはもってこいの場所で、映画の道具一式そこに置いてありますし、スクリーンも、そこの壁に張ってあるのです」
地下室と聞くと、一同の好奇心は一層募った。何か別世界を覗くといった、一種異様の興味が若い兄妹達をそそった。
牛原氏は先に立って、客間の隣りの、ガランとした空部屋に這入り、そこの押入れを明けると、中の床板が揚げ蓋になっていて、その下に、地下への階段が出来ていた。
「何だか気味が悪い様ですね」
玉村氏が笑いながら云った。
「酔狂な真似をしたものですね。ひょっとしたら、この家はもと賭博打ちか何かが住んでいたのかも知れませんよ」
牛原氏は事もなげに答えて、ズンズン階段を降りて行く。一同は主人の気軽な調子にはげまされ、薄気味悪く思いながらも、まさかあの様な深い企らみがあろうとは、知る由もなく、あとに従って地下室へと降りた。
降り切った所に、頑丈な鉄の扉があって、その外に沢山煉瓦が積んである。