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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

「さあ白状しろ。親の命がけの仕事を妨げようとする不孝者め。それ程あいつがいとしいか。うぬ、白状しろ」

ビシリビシリ、細引の鞭は、文代のふっくらとした太腿へ、刃物の様に食い入るのだ。

「いくら親でも、いくら親でも、悪事の味方は出来ません」

文代は、痛さをこらえ、父を睨みつけて、ハッキリと云ってのけた。

「うぬ、うぬ、よくも云ったな。どうするか見ろ」

源造の怒りは極点に達した。

彼は手ぬるい鞭を投げ捨てて、足を上げると、固い靴のかかとで、いやと云う程、文代の脾腹を蹴りつけた。

文代は、「ウーン」とうめいたまま、動かなくなってしまった。

酔っぱらっていた源造は、手加減が出来なかったのだ。娘が気絶したのを見ると、流石に驚いたが、それを介抱する様な彼ではない。

「ざまを見ろ。……サア、今度は娘を上陸させた野郎の番だ。オーイ、誰かいないか。三次を呼んで来い。三次の野郎をここへ引張って来い」

首領の怒号に、部下のものが駈けつけたが、文代の倒れているのを見ると、顔色を変えて立ちすくんでしまった。彼等は源造の癇癪がどんなに恐しいものであるかを、よく知っていたのだ。

「三次はどこにいる。