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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
鋭い彼女は、咄嗟の間に、僕のトリックに気附いたのです。僕が、このカーテンの蔭に犯人がいると云ったのは、つまり鏡に映った妙子さんその人を意味していたことを悟ったのです」
兄弟は、彼等の妹の顔に現われた、この世のものならぬ恐怖の表情を見た。なる程、そう云われて見れば、妙子自身が真犯人ででもなければ、あんな恐ろしい表情をする筈はない。併し、肉親の娘が、その父を殺すなんて、考えられないことだ。
「動機は? 妙子には父を殺す動機がありません」
二郎が叫んだ。
「動機ですか、至極簡単ですよ」明智は少しも騒がぬ。「妙子はあなた方の妹でも、善太郎氏の娘でもなかったからです」
低い声であったが、これは実に晴天の霹靂だ。一郎も二郎も、余りに意外な明智の言葉に、あっけにとられて、暫くは口も利けなかった。
明智ともあろうものが、出鱈目を云う筈はない。さっきの妙子の異様な表情といい、明智の断言といい、どうも嘘ではないらしい。
「では妙子は一体誰の子です。どうして僕の家にいたのです。僕はあれの赤ん坊の時分から知っているのですよ」
一郎がなおも抗弁した。
「びっくりしてはいけません。