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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
のだ。
淋しい丘の上の一軒家、幽霊塔、しかもそこに住む人は、魔物みたいな怪賊につけ狙われている玉村氏だ。不気味な犯罪事件には、何とふさわしい背景であろう。
玉村一家の人々が、打続く怪事件に、おじ恐れていたことは申すまでもない。玉村氏は警察署に頼み込んで、門前に見張りの刑事をつけて貰うやら、新しく男の召使を雇入れるやら、見えぬ敵に対して手落ちなく防備を施した。
福田氏惨殺の現場に居合わせた二郎青年や、夢魔の様な予感に震えていた妙子の恐怖はさることながら、父玉村氏が、かくも賊の兇手を恐れるのはどうした訳か。彼は何事も口にしないけれど、この奇怪なる復讐鬼の正体を、ひそかに思当っていたのではあるまいか。いつか二郎青年が、無遠慮にその点に触れた時、善太郎氏は、
「私自身は他人から恨みを受ける覚えは断じてない。福田の叔父さんだって、まさかそんな敵を作りはしなかったろう。ひょっとしたら、これは私や叔父さんの個人に関係したことではないのだ。玉村家の一族全体に覆いかぶさっている恐ろしい執念だ。だが、聞かないでくれ。私はそれを考えた丈けでも恐ろしさにあぶら汗が流れるのだ。