轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
それから三十分もたったであろうか、二郎はふと妙な音に気づいた。
聞える。確かに聞えている。空耳ではない。あの恐ろしい笛の音だ。福田氏の惨殺された時と同じ節廻しだ。
二郎青年は用意のピストルを握りしめて、ベッドを飛びおりた。
彼は笛の音は、已に兇行が行われたか、或は正に行われんとしているか、いずれにもせよ、一瞬の猶予もならぬ、きわどい場合であることを知っていた。家人を起し廻っている暇はない。彼は矢庭に叫び出した。訳の分らぬ雀でも追う様なわめき声を発しながら、笛の音に向って突進した。洋館を貫く長い廊下を走った。走りながら考えると、それはどうやら妹の妙子の部屋らしい。「アア第三の犠牲者は妹だったのか」咄嗟の場合、頭の中で合点が行った。
と見る、妙子の寝室のドアの前に蠢く黒怪物。二郎はハッと立止った。腋下から冷い汗がツーッと辷った。遂に遂に、恐るべき怪物をまのあたりに見ることが出来た。彼は死にもの狂いの声をふりしぼった。
「何者だッ。動くなッ。動くと打つぞ」
だが、不甲斐もなくピストル持つ手がワナワナと震えていた。
「二郎さまですか」
怪物が答えた。何ということだ。