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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「ウブな可愛いのが今日来たんだよ。それがあんたの相手……」

靴を両手でぶらさげて、家の中の下駄箱にしまいこんだ。

「初見世か」

「クララさん」

と女は呼んだ。

「あいよ」

奥からの返事は意外なしわがれた声だった。ひとをからかいやがってと、俺が女を睨んだとき、奥の部屋の障子が開いて、ワンピースの若い女が出てきた。ひと眼見て、俺は、

「こりゃ、いけねえ」

と首を縮めた。こめかみに頭痛膏を貼った婆さんの顔が、長火鉢の向うにのぞかれた。「あいよ」はこの婆あの声だったのかと見たとき、障子がぴしゃりとしめられた。

「これから、ひいきにしてやってね」

と女は言った。

「お願いします」

とクララは恥しそうに言った。その口もとは俺の好きな受け口だった。いよいよ、いけねえと俺はどぎまぎした。相手は淫売なんだと思っても、このクララには、俺のなかの純情を急に目ざめさせるものがあった。つまり、これがひと目惚れという奴か。

「マリちゃんのおなじみさんが、この子を見て、大変なご執心でね」

マリちゃんというのを俺が知ってるみたいに、そう言うと、女は声をひそめて、

「この子に乗りかえると言うんで、大騒動さ。