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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
「ええ、そのぉ、こう咽喉元まで詰め込んだやつを、正直に、や、もう真平とでもいおうものなら、それ、また一票フイとなる。ポロリポロリと涙がながれる。そこへもって来て、お隣りへ廻ると、またお砂糖。親父を代議士に持つんじゃねえ。子泣かせだよ。」
「なるほど、そう一々お砂糖をお嘗めならなくとも、どうにかなりそうなものですね。」と場長さん。
「いや、後で気がついたんですがね。そのぉ。」
「いつも後で気がつくんだ。」
「待ちたまえ。そこで、と。そう嘗めてばかしじゃやりきれねえ。で、嘗めたふりして、こうそっとふところへザラザラザラさ。秘伝だね。だが、こいつも困ったよ。内ふところがそれ汗まみれだろう。ベトベトする、くっつく。とても気持ちがわれえ。」
さあっと驟雨が走って来た。
驟雨は樹林の前、牧舎の裏ほど白く白くその雨あしを際立たせて、一斉に騒めき慌て出した緬羊の円い円い円い背の重なりを、たちまち模糊たる霧煙の中に引き包んでしまった。
めう……めうおおお……めう……めうおおお……
それこそまた濡れ鼠になって、向うの向うの庁舎の方へと、いっさんに駈け出す私たちであった。
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